フルスタック特権アクセス管理(PAM)ガイド

フルスタックPAM
“Your Guide to Full-Stack Privileged Access Management (PAM)” Mar 31, 2025 by Morey J. Haber より

本ブログでは、フルスタック(完全領域)特権アクセス管理(PAM)の本質、それに含まれるべき機能、そして組織がそれを効果的に実装してハイブリッド環境をサポートし、セキュリティを強化し、運用を簡素化する方法について解説します。

PAMへのフルスタックアプローチが最小権限の多層防御を実現

アナリストのコミュニティは、長年にわたり、現代のID攻撃ベクトルを軽減するための重要な分野として、人間および非人間のIDに対する特権アクセス管理(PAM)を推奨してきました。

各々の組織は、あらゆる形式のIDやアカウント、特に特権アクセスを持つものを標的とする、ますます巧妙化する脅威に直面しています。特権アカウントは「王国への鍵」を握っており、重要なシステム、機密データ、そして企業全体の制御へのアクセスを提供します。

アカウントに過剰な権限が付与されていたり、管理されていなかったりすると、攻撃者は侵害されたIDを悪用して横方向に移動し、権限を昇格させ、ランサムウェアを実行したり、データを盗んだりすることができます。

攻撃チェーンのいずれかの段階で管理者の資格情報が盗用されると、攻撃者はセキュリティツールを無効化し、ネットワーク全体のシステムを暗号化し、数百万ドルの身代金を要求することさえあります。これらはすべて、従来のユーザーベースの脅威検出を回避して実行される可能性があります。

このような損害は財務的にも大きく、企業の信頼にも深刻な影響を与えます。

最新のIDベースの脅威から身を守るには、フルスタックPAMアプローチが不可欠です。これは、IDからエンドポイント、クラウドに至るまで、特権アクセスのすべてのレイヤーを保護し、不正なアクセスや行動を監視することを意味します。

単一の最小権限ソリューションでは、もはや不十分です。組織は、最小権限を実現するために多層防御アプローチを採用する必要があります。

フルスタックアプローチは、従来のPAM機能と最新のPAM機能を統合し、エンドツーエンドの戦略として組み合わせることで、環境を強化し、進化する脅威に先手を打つことができます。

本ブログでは、フルスタックPAMの定義、必要な構成要素、そしてそれをいかに実装すべきかを紹介します。

フルスタック特権アクセス管理の定義

フルスタックPAMとは、IT環境のあらゆるレイヤーにわたってすべての特権アクセスを保護・管理する、統合されたエンドツーエンドのPAM戦略です。具体的には以下のような要素を含みます:

  • 特権資格情報、シークレット、鍵、セッションの管理、監視、アクセス制御、認証
  • オンプレミス、クラウド、ハイブリッドを含むすべての環境に対応
  • 人間および非人間(マシン)のIDを含むあらゆるIDタイプを対象
  • 管理者からDevOpsエンジニアまで、すべての業務担当者の特権操作を管理
  • 従業員、請負業者、ベンダー、監査人など、すべてのユーザーへの安全なリモート特権アクセスを提供

基本的に、特権アカウントを持つ、あるいは特権を取得しうるすべてのエンティティが対象となります。

効果的なフルスタックPAMは、できる限り単一の管理プラットフォームの下で、ITエコシステム全体にシームレスに統合されるべきです。さらに、動的アクセス制御、適応型認証、包括的なレポートなどを提供する必要があります。

この実装により、ゼロトラスト戦略、セキュリティ・バイ・デザインの原則、そしてIAM(アイデンティティ&アクセス管理)のベストプラクティスが実現可能になります。

フルスタックPAMがカバーするレイヤー

今日の組織は、アイデンティティ、エンドポイント、クラウド、SaaS、ベンダーなど、複数の脅威ベクトルに対処する必要があります。
専門的なポイントソリューションは、特定の脅威ベクトルまたは環境に対応することができますが、複数のポイント製品を別々に管理する断片的なアプローチでは、攻撃者に悪用され得る重大なギャップが残ってしまいます。

ここでは、攻撃者が悪用する可能性のある**「特権への経路(Paths to Privilege™)」**を遮断するために、フルスタックPAMアプローチがカバーすべき重要なレイヤーを見ていきましょう。

特権アカウントと資格情報の管理

PAMの基盤は、特権ID、シークレット、資格情報を保護することから始まります。これには次の要素が含まれます:

  • 資格情報の保存:特権資格情報およびシークレットを、安全かつ暗号化されたデータベース(一般的に「セーフ」または「ボルト」と呼ばれる)に保管します。
  • パスワード、キー、シークレットの生成・ローテーション:特権資格情報が放置された状態で攻撃ベクトルとならないよう、パスワードやシークレットを定期的に更新します。
  • 特権アカウントおよび資産の検出とオンボーディング:環境を自動的にスキャンして特権アカウント、資格情報、システムを特定し、PAMソリューションに取り込んで集中管理・監視・ポリシー適用を行います。
  • レポート:パスワードとシークレットの管理に関する包括的なアテステーションレポートを提供します。これには
セッション管理と監視

このレイヤーでは、特権セッションをリアルタイムで監視し、責任の所在を明確にし、コンプライアンスやフォレンジック(証拠保全)目的に活用できる監査証跡を提供します。

  • アクセス管理:ソースとターゲットがどこにあるかに関わらず、ネイティブなプロトコルを開示することなく安全なセッションアクセスを提供します。すべてのアクセスには多要素認証(MFA)を適用し、シークレットの難読化と最小権限の適用が必要です。
  • セッション記録:特権操作をキャプチャし、安全に保存して、監査やフォレンジック分析に対応します。
  • ライブセッション監視:管理者が疑わしいセッションをリアルタイムで確認し、必要に応じて手動または自動で終了させることができます。
  • 異常検出:AIと機械学習を活用して、時間外アクセス、予期しないコマンド、横方向移動の試行など、特権セッション中の異常な行動を検出します。
エンドポイント権限管理

エンドポイントはソーシャルエンジニアリングや脆弱性悪用の対象となりやすいため、EPMにより管理者権限を排除し、PoLP(最小権限の原則)を実現します。

  • アプリケーション制御:許可リスト/ブロックリストにより、マルウェアやLiving Off the Land攻撃(正規機能の悪用)を防止します。
  • ジャストインタイム(JIT)アクセス:一時的、条件付き、時間制限付きで必要な権限のみを付与します。
  • 権限昇格:完全な管理者権限を与えることなく、特定のアプリケーションの実行などに必要な一時的アクセスを許可します。
  • 最小権限の強制:ユーザーとアプリケーションが本当に必要な範囲のみにアクセス可能とし、それ以上は不可とします。
  • 変更管理:OS変更やソフトウェアインストールなど、特権操作には変更管理と監査ログが適用されます。
クラウド権限管理(Cloud Entitlement Management)

クラウド環境では、動的でスケーラブルなリソースへのアクセスを保護することが重要です。

  • IAM統合:クラウドIAMとの統合により、クラウドリソースをPAMから制御可能にします。
  • APIセキュリティ:SaaSを含むXaaSプラットフォームにおけるAPIアクセスの保護。
  • マルチクラウド管理:複数クラウド間でのアクセス制御を一元管理し、設定ミスや横方向移動を防止します。
  • 権限の最小化:過剰なクラウド権限を検出し削除することでリスクを軽減します。
  • リモートアクセス制御:常駐型特権アカウントを排除し、監査可能なJITアクセスを提供します。
自動化された権限管理

DevOpsやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)環境の増加により、自動化されたアクセス権の管理が不可欠です。

  • シークレット管理:APIキーやトークンなど、自動処理に利用される資格情報を保護します。
  • CI/CD統合:継続的インテグレーション/デリバリー環境にPAMを組み込んで安全性を確保します。
  • 非人間ID管理:OT/IoTデバイス、ボット、エージェント、AIなど機械主体のIDを制御します。
規制コンプライアンスとガバナンス

特権アクセス管理は、業界ごとの法令や規制への準拠にも直結します。

  • ポリシーの適用:ID資産全体で社内外のポリシーに準拠したアクセス制御を実施します。
  • 監査対応:詳細なレポートとログにより、規制対象のあらゆるレイヤーにおけるコンプライアンスを証明します。
  • ロールベースアクセス制御:あらゆるアクティビティに対して、職務や責任に応じたきめ細かい権限制御を適用します。
  • ガバナンス連携:IGA(アイデンティティ・ガバナンス・管理)との統合により、入社・異動・退職などのライフサイクルに対応した権限管理を実現します。
フルスタックPAMの成功の鍵

フルスタックPAMを効率的かつ効果的に導入するために重要な要素は以下の通りです:

  • 集中管理と可視化:あらゆる場所の権限・資格・アクセス状況を一元管理できるプラットフォーム
  • 自動化と拡張性:ローテーション、検出、プロビジョニング、パスワードレス認証などの自動化と、クラウド/ハイブリッド環境へのスケーラブルな対応
  • サードパーティ統合:SIEM、SOAR、ITSM、IAMなどとの連携によるシームレスなワークフロー
  • ゼロトラスト対応:継続的なアクセス検証と信頼しない前提のゼロトラスト設計との整合性
  • AI駆動の脅威分析:行動・予測分析により、環境に即した脅威をリアルタイムに検出・対応
  • 優れたユーザー体験:直感的なUIとUXにより、組織全体への導入を促進
BeyondTrustによるフルスタックPAMの提供

BeyondTrustは、IDファーストのセキュリティ原則、簡素な運用性、広範な対応範囲を兼ね備えたフルスタックPAMプラットフォームを提供します。

  • ハイブリッド環境全体で人間および非人間IDに対する特権アクセスを保護
  • あらゆるレイヤーで最小権限およびJITアクセスを実現
  • 資格情報、アカウント、資産を自動検出してオンボーディング
  • セッション監視、記録、監査機能により、コンプライアンスを確保
  •  ITDR(Identity Threat Detection and Response)により、IDベースの脅威にリアルタイム対応
  • IAM/ITSM/SIEMとの連携により、運用の可視化と統合管理を実現

BeyondTrust Pathfinderプラットフォームは、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドのいずれの展開モデルにも対応し、セキュリティと操作性を両立させながら組織のニーズに適応します。

フルスタックPAMはこれまで以上に重要

フルスタックPAMは単なる製品群ではなく、すべての特権アクセスを包括的に保護するIDセキュリティ戦略です。ID中心の現代の脅威環境では、以下の効果をもたらします:

  • 最新のIDベースリスクへの対応、エンドポイントの保護、攻撃対象領域の縮小
  • 不適切なアクセス、マルウェア、内部脅威などからの機密リソースの保護
  • 地理的な制約に関係なく、シームレスな規制コンプライアンスの実証
  • あらゆる拠点の従業員を最小権限と多層防御でサポートするセキュリティ体制

フルスタックPAMは、現代におけるIDセキュリティの要として、今後ますます重要性を増していくでしょう。

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Morey J. Haber, BeyondTrust社 最高情報セキュリティ顧問

Morey J. Haberは、BeyondTrustの最高情報セキュリティ顧問であり、同社でIDと技術に関して率先して貴重な意見を発信しています。IT業界での経験は25年以上に及び、『Privileged Attack Vectors』、『Asset Attack Vectors』、『Identity Attack Vectors』、『Cloud Attack Vectors』の4冊の本を出版しています。以前は、BeyondTrustの最高セキュリティ責任者兼、最高技術責任者であり、また、製品管理部門の副部長を12年近く務めていました。2020年に「Identity Defined Security Alliance (IDSA)」の上級顧問理事に選出され、IDセキュリティのベストプラクティスについて、企業連合を支援しています。彼はもともと、2004年からプロダクトオーナー兼ソリューションエンジニアとして働いていたeEye Digital Securityの買収に伴って、2012年にBeyondTrustに加わりました。eEye入社前は、Computer Associates, Inc.のベータ開発マネージャーでした。その経歴は、飛行訓練シミュレータを構築する政府の委託先における信頼性と保全性に関するエンジニアとして築かれたものです。ストーニーブルックにあるニューヨーク州立大学の電子エンジニアリング科で理学士の学位を取得しています。

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